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ハタチノ
ヴォイス

vol 007

2024.02.06

ハタチノヴォイス:2023 受講生「ねこは組」相互インタビュー

ハタチノヴォイス:2023 受講生「ねこは組」相互インタビュー

2023年12月13日と2024年1月17日の両日、本WEB制作にも携わった鳥取大学「アートプロジェクト」2023年度受講生8名の相互インタビューを、三つの班ごとに開催しました。

執筆|
鳥取大学アートプロジェクト2023年度ねこは組

編集・撮影|
石田陽介

編集補助|
蔵多優美

園部

最初の質問ですが、生活していて楽しいと思える瞬間を教えてください。

髙橋

私が楽しいと思う瞬間は、誰かと笑い合っている時です。
なぜなら、一緒に笑うとその人とすごく心の距離が近くなるなって思うからです。
その瞬間がとても嬉しく感じますね。
髙野さんはどうですか。

髙野

私は、食べている時ですね。
最近、大学近くにあるお店に通っているのですが、そこの料理がすごく美味しくて、心と胃袋が満たされていきます。
もう一つは、友達と一緒に過ごすことでしょうか。
その友達とはいつも笑い合ってばかりで、最終的には話した内容なんかは忘れてしまうのですが、そういった何気ない会話ができる友達がいるというのがとても幸せで楽しいことだと感じてます。

園部

僕は、景色を見ているときですね。
季節を感じるものとか、運転しているときに車の窓から見える景色とか、例えば夏と冬って空の広さが違うってよく言うんですけど、そういったものを見て綺麗だなって感じるときが生きていて一番楽しいかなと感じていますね。

髙野

じゃあ、今までで一番印象に残ってる景色はありますか。

園部

出身高校の前に桜並木道みたいな街道があって、入学・卒業シーズンの時期には満開になるんです。
入学した時みた景色と卒業した時にみた景色が、全く違う時期にみたものなんだけど、なんだか光景が重なってもいって、とても綺麗だなと思えたことが印象に残っています。
二人は友達と話す時というのが共通していましたが、普段はどのようなことを話していますか。

髙野

まあ、本当に覚えていないぐらい、たわいのない話をいつもしていますね。
例えば、コンビニスイーツの話とかです。
ここのコンビニには満足したなって。
美味しいんだけど、これはちょっと高いね、とか。
大半が食べ物の話ですが、悩み事がある時や辛いときには、友達に聞いてもらって、アドバイスをもらい、慰めてもらっています。
素敵な友達ができてとっても楽しいです。

髙橋

私も基本的にはくだらない話をしていますね。
でも、友達によっては時に深い話もしてますよ。
例えば、ちょうど昨日は友人宅で「万引き家族」という映画を観たあと、結構語り合いました。
その友達とは一緒に是枝監督の映画作品を観ることに最近はまっていて、見終わった後はいつも作品を批評し合っていますね。

園部

では、逆に辛かったり悩んだりしたとき、どのように克服してるんですか。

髙野

そうですね、最近の私は「まあ、いいか」という精神で、日々を送っていますよ。
高校生くらいまでは、なにか完璧にやらないと気が済まないという性格でした。
少しでも欠けることがあると、自分を責めてなかなか克服するということができなかったんです。
もちろん、一生懸命に何事にも取り組んではいますが、失敗しても気にならなくなるのがこの「まあ、いいか」精神の良いところですね。
その後は、日々の中でなんとなく時間が解決してくれるんです。
時間がだいぶ経ってからの気づきもあったりもします。

髙橋

そっか、これまでは結構負けず嫌いだったんですね。

髙野

そうなんです。
自分に厳しくてストイックでした。
けれどそれが結構自分を苦しめていて、蕁麻疹が出たことなんかもありました。
そんな自分を変えたいなと思い、受験勉強が終わって肩の荷が下りたこの時期に、毎回この「まあ、いいか」精神に切り替えると、「なんだか、人生楽しいかも」って思えるようになって。
自分を許せるようになりました。

髙橋

私の場合は、本気で頑張りきったことが結果へと結びつかなかった時期があって、何というか、ぽっかり心に穴が開いた感じがしてしまい、それが辛かったです。
それが受験の話なんですけど、ダメだった結果がどうのこうのじゃなくて、「こんなに頑張ったのに。あれ、何もなかったんだ」みたいになって。
そういう虚無感は私初めてで。
それが辛かったですね。
これは時間が経ってから、受験生活を客観的に振り返ることを通しながら克服していきました。
今ではもう、大学生活がとても楽しいし、真剣に英語を勉強したことは、自信にも繋がってます。
一度、客観的に振り返ることで、自分のやってきたことを認められました。

園部

僕は、あまり辛いって感じることがない能天気な人間なので、うまくいかない時でも「最後には、なんとかなる」と思って生きていますね。
自分への過信とはまた少し違うんですけど、未来の自分が何とかしてくれるだろうなぐらいのスタンスでいます。
基本的に「なんとかなるでしょう」っていう精神ですね。

髙橋・髙野

すごいですね。(笑)
尊敬します。

園部

これまでの人生の中で、思い出に残ってる人っていらっしゃいますか。
僕は、祖母です。
祖母は、だいぶファンキーな人で、人間として強く生きている印象が強く残っています。
僕は昔からおばあちゃん子で、祖母の生き様を見て育ってきたので、今の自分の生き方はだいぶ影響を受けている気がしていますね。

髙橋

私が印象に残ってる人は、高校の数学の先生です。
すごくテキトーな先生で、なんか本当にテキトーなんですよ。(笑)
でもなんて言うんだろう、結局は本質を教えてくれて、私みたいに数学ができない生徒にも、苦手意識を持たせないような授業をしてくれました。
それまでの、「数学とは、丁寧かつ正確でならなければいけない」みたいなイメージが私の中で覆されたんです。
そのことで、私はすごく心が楽になりましたね。

髙野

楽ですよね、そういう人と一緒にいると。
そういう人に私自身がなりたいですよ。

園部

「最小限のエネルギーで、コスパ良く生きる」みたいな感じですね。
そういう人が案外器用で、社会を登りつめますよね。

髙橋

そうなんですよ。
基本的にテキトーだったんですけど、でもやはりあまり学校に来れていない生徒などをとても気にかけていて、本当に優しい人なんだなと思って信頼もしていました。

髙野

私が印象に残ってる人は、高校三年生の時に来た進路指導の先生です。
その先生は最初、すごく怖いという印象でした。
自分はもともと獣医になりたかったのですが、高校三年生の九月ぐらいに、その先生から「あなたが将来やりたいことって、獣医という職業では実現化が難しいので、こっちの学部の方がいいよ」と言われました。
始めは「この先生は何を言っているのか」って思いましたが、よくよく調べ、 自分の気持ちを整理しながら視野を広げてみると、ようやく自分の将来に何が適切な選択なのかを気づ具ことができました。
その方向転換をしてくれたのが、その先生だったんです。
今この大学の農学部にいるのも、その先生と支えてくださった周りの先生のおかげです。
私が反発しても、最後まで付き添って下さいました。
この先生に出会えてよかったなって心から思います。
厳しいけど、その中にも愛があっていい先生です。
その先生は担任だったわけでもないし、会って数ヶ月しか経っていないような期間でしたが、私の泣いている顔・笑ってる顔、全部見られてます。(笑)
担任の先生にも。

園部

今回、三人でグループを組んで活動をしたわけですが、この授業「アートプロジェクト」を取った理由とかってなんかありますか?

髙橋

私は前期でたまたま石田先生の「芸術入門」の授業を取ったことがきっかけです。
「芸術入門」の授業は、始めは楽だから取れてラッキーくらいにしか思ってなかったんです。
だけど段々と、初めて触れるアートセラピーというものに興味が出てきて、終わりを迎える頃にはもう授業の動画を見るのが楽しみになっていました。
だからもし後期で石田先生の授業があれば取りたいと考えていました。

髙野

私は「地域創生推進プログラム」に指定されているカリキュラム授業にこの「アートプロジェクト」があったので取りました。

園部

僕は国際地域文化コースに所属していて、実践的に文化に触れられる機会がないかなと探していたところ目に付いたのがこの授業でした。
みなさんは、この授業を受ける前と後で見方や考え方が変わったと思うことはありますか。
僕は変わったっていうより、こういう見方があるんだと気づいたという感じです。
例を挙げると、視覚障がい者の方と一緒に美術館を観に行った「ギャラリーコンパ」の中で、美術館を運営する学芸員の方と、視覚障がい者やその方々を支援されてる方などと、いわばその中立に立たされたみたいな感じで対話を聴けることができました。
自分では見えてない世界が他の人には見えてるし、もしかしたらこういう見方もあるんじゃないかっていう、新しい視点が得られたんじゃないかなと感じています。
今まで自分が見えてるものが全てという感じでここまで来てしまったので、ここで新しい視点が獲得できたっていうのが嬉しいって感じましたね。

髙橋

この授業を取る前の私は、自分の興味が四方八方に広がっていて、収集がつかない感じでした。(笑)
結構何にでも興味があったからこそ、あまり自分の軸が定まっていないなとも思っていて…。
でもこの授業を取ってみて「自分はやっぱり、様々なバックグラウンドを持つ人たちと話すことが好きなんだ」ということに気が付いていったのです。
グループでの対話や視覚障がい者の方との交流など、立場も経験も自分と全く異なる人と話すと価値観が大きく変わることがあって、その瞬間がとても楽しいんです。
そのようなことを再認識出来て、自分が大切にしたいことが見えてきた気がしました。

園部

確かにこの授業ではイベントなどで初対面の方と話す機会がありましたし、結構貴重な体験になりましたよね。

髙野

私はアートついて本当に何も知らなかったのですが、アートって本当にすごいと今では感じます。
アートを観て、言語化していくうちにどんどん素晴らしさが見えてきて、見向きもしなかった絵に自分が目を向けるようになったことが、私の中で変わったことです。

髙橋

確かに、初回の授業が終わったときには「私アートはなんかあんまりだわ」みたいな話をしていたのに。(笑)
もう今ではそんなことないですもんね。

髙野

そうですね。(笑)
鳥取駅に飾ってある絵を、じっくり見るくらいに変わりました。

園部

それでは最後に、ここまで授業を受けてきた感想をそれぞれお伺いします。
それを踏まえて、これから社会に出てアートにどう向き合っていくか、どんな人物になりたいのかをお聴きしたいと思います。

髙橋

私は将来、途上国の貧困問題解決に貢献できる人になりたいです。
実際に現地に行って動いてみたいのですが、灌漑施設設計とか食料生産とか技術を専門にしている自分があまり想像できなくて…。
そのような中、先週行った視覚障がい者の方との芸術鑑賞にピンと来るものがありました。
例えば、現地の子どもたちに絵を描いてもらって、誰か一人目隠しをした状態で第三者の子がその絵を説明して、目隠しをしている子に何が描かれているか当ててもらうみたいな。
先ほどの質問でもあったように、私は誰かと笑い合って心の距離が縮まる瞬間が好きなので、「心の豊かさ」に視点を置いて貧困問題に向き合っていくのもいいかもと思いました。
そのような形で自分の元々あった興味に、この「アートプロジェクト」の授業を繋げていきたいなって思っています。
お二人は、どうでしょうか。

園部

将来、音楽に携わりたいという気持ちが僕の軸にはあります。
身近に音楽をやっている友人がいたこともあって、これからの人生で、そういう人たちに自分が何かできることはないかを、高校生の頃から模索していました。
アートのそばにいる人間になりたいって、今考えています。
この授業や大学での学びを通して、「こんなことやれたらいいな」くらいにこれまで可能性として考えていたものが、今はどんどん形になっていき、自分の中に落とし込まれていく感覚があります。
先ほど触れましたが、視覚障がい者の方とアートを見るというものと似ているんですけど、以前何かの記事で耳の聞こえない方がライブやフェスに行って楽しめるかどうかというものに出会いました。
実際にライブって音もすごいですけど、その場の熱気であったりとか、音が聞こえなくても肌で感じる音というか肌にひりつくみたいな感覚だったりを得る、そのような楽しみ方もあるというのを聴覚障がい者の方がインタビューで語ってたの見ました。
そういった活動に「関与できたらいいな」と考えてたのが、「やってみたい」へと少し昇華していくみたいな感覚があるので、裏方のような役割でアートと向き合っていきたいと考えてます。

髙野

私は将来、アートとどう向き合っていくかという質問に、答えはまだ見つかっていません。
私の夢は、人と自然がうまく共生していく世の中を作っていくことです。
命が軽視されているこの世の中を変えたいと思い、今この大学にいます。
この私の夢を結びつけて考えると、何か見えてくるものがあると思います。
アートは色々な気づきのある場です。
この前の米子市立図書館や米子市美術館で開催したギャラリーコンパイベントでそれに気づくことができ、一人では気づけないこともたくさんありました。
これからは当たり前のようにアートを一緒に観賞するような仲間と場を、自分の周りに作っていきたいです。
将来に直接アートに挑戦したいというよりは、ふとした時にアートへと立ち寄りたいと私は今、感じてます。

ねこは組

鳥取大学アートプロジェクト2023年度受講生

ねこは組メンバー:園部功一郎、髙野采香、髙橋侑希