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ハタチノ
ヴォイス

vol 006

2024.02.06

ハタチノヴォイス:2023 受講生「とまと組」相互インタビュー

ハタチノヴォイス:2023 受講生「とまと組」相互インタビュー

2023年12月13日と2024年1月17日の両日、本WEB制作にも携わった鳥取大学「アートプロジェクト」2023年度受講生8名の相互インタビューを、三つの班ごとに開催しました。

執筆|
鳥取大学アートプロジェクト2023年度とまと組

編集・撮影|
石田陽介

編集補助|
蔵多優美

上西

まず、僕も含めてこの「とまと組」メンバー三人は地域学部の国際地域文化コースなのですが、みなさんがこのコースを選択した理由はなんですか。

私はアートに元から興味があって、このコースでならアートを自分自身で作り出すことも、アートを用いた町おこしをする方法も学べると思ったからです。

上西

なるほど。
でも、“アート”っていろいろな分野があるじゃないですか。
例えば映像物とか、自分で描いたものとか…。
どういったアートを想定しているのでしょうか。

そうですね、まず私はやりたいことが二つあるんです。
私は高校生のときに留学し、そこで美術館に訪れました。
言語の壁はあれ、そこで友人と会話をしながら鑑賞しました。
これまでこの授業「アートプロジェクト」で私たちが行ってきた、“対話を通した鑑賞”のように。
私は、そのような“対話を通した鑑賞”方法が普通にできる美術館をもっと増やしていきたいな、と考えています。
もう一つ挙げると、私はアニメが好きなんです。
留学先でも、日本のアニメのファンがたくさんいました。
そういった方々に聖地巡礼として、いわゆる“元ネタ”となった場所に訪れてもらえるように、都会のような地域だけでなく地方の地域を題材に制作されたアニメを広めたい、と私は考えています。

上西

なるほど。アニメがお好きなのですね。
聖地巡礼は、その地域の活性化にも繋がりますよね。
早田さんはどうですか。

早田

僕は、国際関係自体に興味があったので、このコースを選択しました。
海外にいったことはないですが、講義や活動を通して留学できればと考えています。

上西

留学で行ってみたい国や地域はありますか。
アジアとかヨーロッパとか…。

早田

特にないですね。
「海外」と「留学」という点に、興味を持ちました。

上西

なるほど。
僕にも理由があります。
小学生の頃、僕には将来の夢がありました。
よく空港で高い塔を見かけませんか、管制塔といって、飛行機に離陸・着陸の指示を出す場所です。
そこで働く人のことを「航空管制官」と呼ぶのですが、それは私が当時、将来なりたかったものでした。
その頃から、僕は国際系に興味を持つようになりました。
中国に訪れてからは中国語にも興味を持つようになって、英語だけでなくアジアの話者が多い言語である中国語を学びながら、国際関係についての知識も深めたいと思い、僕はこのコースを選びました。

上西さんは、なぜ中国へ訪れたのですか。

上西

もともと中国に特に深い思いれといったものはなかったのですが。
当時も観光で訪れただけなのです。
香港と上海への観光の経験があるのですが、中国ならではといった街並みと、親しみやすさを体験して、中国は魅力的だなって感じるようになりました。

なるほど、そうだったのですね。

上西

みなさんはこれまでの授業やアートプロジェクト以外で、アートに触れる機会などはありますか。

早田

僕は、ほとんどないですね。
こういった授業を選択することを通して、アートに触れる機会を作っています。

私は美術館を巡ることが好きなんです。
先週も、岡山県の奈義町現代美術館へ訪れました。

上西

先週!
頻繁に訪れるほど、お好きなのですね。
森さんは、特に好きな美術作品はあるのですか。
例えば、現代美術作品とか、古風な作品とか…。

「作品の好み」というより「作品自体を美術館で鑑賞すること」が好きですね。
でも、山陰地方には美術館が少なくて…。

上西

確かに美術館が少ないですよね。
私も鳥取県に来てからは、鳥取市と米子市以外で美術館がある場所を、よく知らないです。

京都の美術館はよく知っているのですが、こちらの山陰地方では美術館の数が少ないので、ちょっと寂しい気持ちになりますね。

上西

アートに触れる方法の一つ、それが美術館の存在ですよね。
アートの定義は一概には言えませんが、僕は漫画やアニメにたくさん触れてきましたし、また自分でも絵を描いたりします。
数年前までアトリエにも通っていたので、そこで描いた作品を展覧会や美術展に出展していただけたりもしました。

いいですね。
描かれる絵は上手いのですか。

上西

趣味で描いている範囲なので、僕自身からは絵の出来について上手さの自覚はないんです。
でも、絵を描いている時間は幸せに感じますよ。

早田

それはいいですね。

上西

みなさん続きまして、この演習授業の中で「視覚を超えたアート鑑賞ワークショップ ギャラリーコンパ」を運営してみた体験を通しての感想をお願いします。

私は、とても楽しかったです。
アテンド役を担ったのですが、一緒に鑑賞をした視覚障がい者の方が、鑑賞後「助かりました、ありがとう」という言葉を頂いて、嬉しかったです。

上西

それは嬉しいですね。
初めての経験の中で、「自分は上手く対話を通した鑑賞ができているのだろうか」、「相手の方には楽しんでもらえているだろうか」と模索する中で、相手からのその一言があるだけでも、自分は救われた気持ちになりますよね。

早田

僕も、普段は視覚障がい者の方が周りにはいないので、アートを通して一緒に交流できたことは、とてもいい経験になったと感じていきました。
また、僕はアートに触れる機会も少ないので、「ギャラリーコンパ」という企画自体に自身が関われたことも、今後の自分の人生に活きそうです。

上西

早田さんは、そうした難しい経験の中で、参加された方からは何か言葉をかけてもらえましたか。

早田

はい、僕も「ありがとう」と言っていただけたことが、嬉しかったです。

上西

僕も、今までになかった経験で。
もし今回の「ギャラリーコンパ」に参加できていなかったら、おそらく自分で参加する機会はなかったでしょう。
積極的に参加しようにも、切り口がわからなかったと思います。
アートという分野で、新しい考え方が発見できて、貴重な経験であったと思います。

早田

この授業で一度、「ギャラリーコンパ」開催の事前体験として、自分が目を瞑り、実際に作品の特徴を耳からの情報だけで想像する体験をしました。
目を開けるとその作品は想像していたものとは大きくかけ離れていたので、視覚障がいを持つ方にどう伝えるか、どのように伝わっているのかと考えることが、自身にとって良い経験になったと感じました。

私は人と話すことが好きなので、アートと人の関わりに重きを置いたギャラリーコンパに楽しく参加することができました。
特に興味深いと思ったことは、参加者のどなたかが仰っていた「対話を通して鑑賞をすることで、話す相手の内面も知ることができた」という感想を伺ったことです。
この言葉には、とても納得しました。
自分一人だけでは見えていなかったアートの視点が、対話を通して違った角度から見えたことで、その人の普段の視点が理解出来ましたね。

上西

そのことを通して、森さんの将来の幅って広がりましたか?

そうですね。
まさに「将来こういうことがしたい!」といったものを、見つけた気がしています。

上西

僕も「ギャラリーコンパ」のような、対話を通した鑑賞は初めての経験でした。
これまでは誰かと美術館に訪れても、作品を前にその場で意見を言い合う、といった経験はありませんでした。
一通り作品を観終わった後に感想を言うことはありますが、その場で作品の詳細を説明することは限られた場でしかできない経験だと思います。
自分にはできない視点からの鑑賞ととい点で、視覚障がい者の方と鑑賞することに何の隔たりもないことが実感できました。

私は中学生まで、作品鑑賞という場が、得意ではありませんでした。
「みんなでこの作品を鑑賞しましょう」「私語は厳禁です」「後で感想をまとめましょう」といった、縛られた鑑賞が苦手でした。
ですからこのような鑑賞方法があることを知った上で、学校教育の場でもこのような方法が普及すれば良いのに、と考えてしまいます。

上西

「ギャラリーコンパ」のように、森さんには対話を通した鑑賞が合っている、ということですね。

はい。
鑑賞の視野といったものが、私の中で広がりました。

上西

では、演習授業「アートプロジェクト」の履修前と履修後の、みなさんの心情の変化を教えてください。

履修前は、“アート”といえば絵画を思い浮かべてきました。
しかし授業を受けて、様々なアートの領域を知ることができました。
例えば「アートセラピー」といった、治療に用いるアート。
瀬戸内海にある島全体をアートで溢れさせた、広告や体験のアートもありました。
授業を通しそうした存在を知ることで、建築的・創造的なアートや、それらに基づく療法の在り方や、人との繋がりのツールとしてのアートの所在を学ぶことができました。

上西

確かにアートは鑑賞していて、どこか心安らぐ一面がありますよね。
そういったものを活かし、療法の術とすることはとても斬新で、僕も素晴らしいと感じました。

早田

僕は、「ギャラリーコンパ」において、アートを通して他の人と意見交換をしたことや感謝をされた体験が嬉しくて、思いがけない気づきとなりました。
人との関わりの上で当たり前なことではあるのですが、アートを介在した人との交流は、この履修前ではできなかった体験でした。

上西

なるほど。
「アートを通じて当たり前のことに改めて気づかせられる」、私も同じです。
履修前は、自分にできることがあるのか、自分にどうやって活かそうか、などと考えていたのですが、運営に携わった「ギャラリーコンパ」やアートフォーラムでは、「アートを介在させることを通して、自分は自分自身とどう関わるか」ということについて、大いに考えさせられました。
僕は履修前からもアートに興味を持っていたので、この演習授業「アートプロジェクト」を通して、新たな道筋からアートの認識を深めると、自分自身の将来の道も広がるのではないか、とも思いました。
ありがとうございました。

とまと組

鳥取大学アートプロジェクト2023年度受講生

とまと組メンバー:上西雄飛、早田勇亮、森美理