水音だより 1 「おはよう おはよう」
朝の時間が好きだ、と思えるようになったのは、もちろん大人になってから。
子どもの頃は、布団の中が一番好きな場所でした。
ひとりの暮らしなら、私はきっと自分を律することができなかったと思う。
誰かの手を必要としている生き物(私にとってそれは子ども)のために、
朝6時に室温6℃の台所を温めようなんていう奇跡が起きる。
まず最初にヤカンに水を入れて火にかける。
シュンシュンと歌が聞こえるまでにかかる時間の長さが、私に季節を知らせてくれる。
その間にラジオ体操第一をして首や肩のコリを確認する。
関節の動き、内臓の位置や硬さ、体の中のどこに滞りがあるのか手をあてて探る。
そして胸に手を当てて今日の心はどうだい?と聞いてみる。
引きずってることがあるのか、息が浅いのか深いのか、なにかに執着しているか。
何もないクリアな朝なんて少ない。
自分にどんな澱みがあるのかを知ることで、今日の過ごし方にほんの少し気をつける。
さあそして、寒い朝に子どもを布団から引っ張り出すという世界で一番、難しい仕事にとりかかろう。