であう

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水音
だより

vol 002

2024.01.29

香りと記憶

香りと記憶

鳥取県若桜町にて「gallery cafe ふく」をひらいた、イラストレーターひやまちさとからの音の絵手紙。耳をすますと、澄んだ水音が届きます。

イラスト・執筆・音声|
ひやまちさと

水音だより 2 「香りと記憶」

フランスの紅茶のティーバッグ
グリーンティー,キャラメライズアーモンド,ピスタチオ,
森の腐葉土の、キノコの匂い

山に分いると
道の先をいくつもの木々や植物が立ち塞がる。
手で木々を払って前に進もうとするその度に、
瑞々しい枝葉の匂いが話しかけてくるような気がする。

ここにいない人を思いながら
あの日、優しくできなかったことが、しみしみと心にくる。
何度も思いを巡らせる。

まずは、白湯を飲もう。
指先から手のひらにカップの温度が伝わる。
唇から流れ込んだ白湯が食道を通って、胃に落ちるのを感じる。
そこで初めて、大きなため息をつく。

傷つくことって、山ほどある。
同じくらい、傷つけることもある。
そうして逞しくなれ、っていう話ではなくて。
傷を知るのは悪いことではないし
傷つけてしまったことに傷つくのも悪いことではない。

同じ目標を持って、同じ道を辿っても、私たちが見えている景色は違う。
そんなことに気がつく午後もありますよね。

ひやまちさと

イラストレーター・Galleryふく店主

1988年生まれ。県立鳥取湖陵高校卒業後、関西でデザインとイラストを学び、イラストレーターとして活動中。建築の仕事をする夫と長男の3人家族。