水音だより 2 「香りと記憶」
フランスの紅茶のティーバッグ
グリーンティー,キャラメライズアーモンド,ピスタチオ,
森の腐葉土の、キノコの匂い
山に分いると
道の先をいくつもの木々や植物が立ち塞がる。
手で木々を払って前に進もうとするその度に、
瑞々しい枝葉の匂いが話しかけてくるような気がする。
ここにいない人を思いながら
あの日、優しくできなかったことが、しみしみと心にくる。
何度も思いを巡らせる。
まずは、白湯を飲もう。
指先から手のひらにカップの温度が伝わる。
唇から流れ込んだ白湯が食道を通って、胃に落ちるのを感じる。
そこで初めて、大きなため息をつく。
傷つくことって、山ほどある。
同じくらい、傷つけることもある。
そうして逞しくなれ、っていう話ではなくて。
傷を知るのは悪いことではないし
傷つけてしまったことに傷つくのも悪いことではない。
同じ目標を持って、同じ道を辿っても、私たちが見えている景色は違う。
そんなことに気がつく午後もありますよね。