水音だより 3 「玉子焼きドタバタ」
台所仕事のための灯油ストーブの前に
小さな椅子を置いている。
朝ごはんを作る合間に
この椅子に座ってお茶を飲む。
人生とはなんであろうか。
たった36年生きただけの私が一生懸命考えたところによると
人生とは「生活」のようだ。
米を炊く、ちぎっておいた白菜とお揚げで味噌汁をして、
おかずはさて何にするか。
朝からそんなに手の込んだことはしない。
昨晩の残り物がベストウェイ。
家族のリクエストを聞くのは
30回に1回くらいで
基本的には「胃腸」の声に耳を澄ませる。
仕事をするのは、1日7時間と決めている。
睡眠は8時間〜9時間。
もちろんそんな生活は30代になってから。
自分の弱さを知ったから、
誰かを愛せたんだと思う。
高校生の時、好きだった人にお弁当を作る度に
玉子焼きが下手だった。
彼のことはもうそんなに思い出さないけれど
「そんな時は、マヨネーズを入れてみて」
と教えてくれた女友達のことを
卵焼きを巻くたびに思い出している。