であう

  1. であう
  2. 水音だより
  3. しじみとはんぺん

水音
だより

vol 004

2024.01.29

しじみとはんぺん

しじみとはんぺん

鳥取県若桜町にて「gallery cafe ふく」をひらいた、イラストレーターひやまちさとからの音の絵手紙。耳をすますと、澄んだ水音が届きます。

イラスト・執筆・音声|
ひやまちさと

水音だより 4 「しじみとはんぺん」

心に穏やかさを取り戻したいとき
水辺に寄るのはどうしてだろうか。

けれど今日の水面は荒く波が立ち
雲はどんよりしている。
雲間から光がさすかしらと期待するも、望みは薄いようだ。
それでも水鳥たちは水面に降り立ち
またどんどんと流されていった。

小舟がやってきては
水中の黒い宝石をかき集めて
去っていった。

どんな感情も、一度自分の中で噛んでみるとする。
あまり美味しくないし、ちょっとお腹が痛い気がする。

そんな時は、温めた湯たんぽをお腹に抱えて
布団にもぐりこんだっていい。
もちろん年齢や性別も関係なくね。
そのあと、急激に元気にならなくてもいい。
そろそろっと布団から出てきて
ちょっとだけ明日を見ようとするときに
小さな声でこう、つぶやいてみませんか。

「しじみとはんぺん」

病気が立ちどころに治ったり、お金持ちになったり
という効果はひとつもないけれど。
なんだか、ああ生きているって思えるかもしれないね。

じゃあまた、いつかどこかで。

ひやまちさと

イラストレーター・Galleryふく店主

1988年生まれ。県立鳥取湖陵高校卒業後、関西でデザインとイラストを学び、イラストレーターとして活動中。建築の仕事をする夫と長男の3人家族。