よむ

  1. よむ
  2. ハタチノヴォイス
  3. ハタチノヴォイス:2022 受講生「てとら組」相互インタビュー

ハタチノ
ヴォイス

vol 004

2023.02.22

ハタチノヴォイス:2022 受講生「てとら組」相互インタビュー

ハタチノヴォイス:2022 受講生「てとら組」相互インタビュー

2023年1月11日と18日の両日、本WEB制作にも携わった鳥取大学「デザインプロジェクト」2022年度受講生12名の相互インタビューを、四つの班ごとに開催しました。

執筆|
鳥取大学デザインプロジェクト2022年度てとら組

編集・撮影|
石田陽介

編集補助|
蔵多優美

永井

まず、芸術に心を打たれたり、感動した経験はありますか。

古森

私は大阪で観た、劇団四季の『オペラ座の怪人』が印象に残っています。
舞台装置の迫力に一番感動しました。
もちろん歌でも感動しましたが、自分の目の前にある世界が壮大すぎて言葉も出ませんでした。
日本で一番大きい劇団だからこそできることだと、感じました。
もう一つの感動ポイントは、劇場全体の空気感です。
ミュージカルは歌が終わるごとに拍手が上がるのが基本なのですが、初見の場合、いつ拍手すればいいかわからないときがあります。
でも、その時はどこからともなく拍手が聞こえてきて、周りもつられて拍手する流れで進んでいきました。
歌舞伎と似たような、客席側と舞台側のつながりをそこで感じられて、より胸が熱くなりました。

坪内

単に受け取るだけじゃないっていう感じですね。

古森

そうですね。

坪内

自分は、アートかって訊かれたら微妙かもしれないですけど、『ONE PIECE エピソードオブメリー 〜もうひとりの仲間の物語』というアニメですね。
主人公のルフィが冒険の序盤から乗っていた船があって、その船とお別れするシーンのものなんですけど。

永井

船の名前がメリーってことですか。

坪内

そうです。
その船が長旅をしていたこともあってボロボロになってしまって、この先の航海が難しいということでお別れをするという決断をするんですね。
ただ、それについて旅の仲間の中で意見が割れて、一味が崩壊の危機を迎えてしまうんです。
そして、非現実的なんですけど、それに対して船は悲しんで涙を流すんです。
その後、数々の事件を経て、ボロボロだったはずのメリーが最後の力で一味の危機を救うんですね。
そして無事に事を解決した後、メリーとお別れすることになり、そこで、火を放たれて燃えているメリーがルフィたちに感謝の言葉を述べるんです。
メリーは言ってしまえばただの船なんですよ。
でも、ルフィたちは一味の仲間と同じようにメリーのことも仲間だと思っていて。
逆もしかりで、そんな感じで「もの」にも気持ちがある、アートもそうですけど、そういう「もの」に気持ちを込めるっていうのはいいなと思いますね。
この年になって恥ずかしいんですけど、このシーンを見ると毎回泣いてしまいます。
永井さんはどうですか。

永井

実は私も古森さんと同じ、劇団四季です。
小学校の時に初めて観に行って。
そもそも劇とかミュージカルを、まだ全然見たことがなかったんです。
だから、親に連れられて行った感じだったんですけど、観てあまりにも感動した覚えがあります。
『サウンド・オブ・ミュージック』をその時は見たんですけど、小学校の時なので具体的にどこにどう感動したかは、あまり覚えていませんが。
それこそ世界観かな。
歌も踊りも全てが完璧な感じで、本当にすっごい感動したっていうのは覚えてます。
だから小学生の頃は、私もミュージカル出たいと思ってたぐらいで、最近は全然見に行けてないんですけど、今、最初いきなり劇団四季の話でてきて、すごいテンション上がっちゃいました。

古森

劇団四季って、王道中の王道なので、誰でも世界観に入りやすいですよね。

永井

お金は結構かかるけど、本当に価値はあるなって思います。
次に、 アートセラピーは今後普及していくべきなのかどうなのかっていうことについてどう思いますか。

古森

私はもちろん普及していくべきだと思いますが、よりポピュラーになってほしいと感じます。
私は最初セラピーと聞くと病気にかかった人が行うものというイメージを持っていました。ですがアートが介入することによって、堅苦しいイメージが薄くなると思います。
もっと気軽に行けるものになったら、より人々の生活が向上するのではないでしょうか。

坪内

自分は、必ずしもそうとは言えないと思っています。
需要があるならという条件付きかなと。ただ、隠れた需要があることがあるので、広く知られるべきではあると思います。

古森

必要な人達って、見えないっていうか分からないですもんね。

坪内

誰が必要としているかっていう感じですね。

永井

そういう、 心理的な部分って難しいですよね。
私は、そんな特別大きく普及するほどではないっていうか、特別大きく普及する必要はないかなみたいな感じです。
セラピーはアート以外にもいろいろあるじゃないですか。
音楽とか、ちょっと後はよくわからないけど、いろんなセラピーがある中で、アートセラピーだけが特別に広まる必要はないかなって思うし。
他のセラピーももう少し広まった方がいいと思うし、その過程でアートセラピーが広まる、普及していく分にはいいかなって思ったりはしています。
でもやっぱり、絵が好きじゃない人とか絵を描きたくない人もいると思うから、強制的に絵を描かせるのは違うと思うし、様々な治療法の手段の一つとして、もう少し広まってもいいんじゃないかなっていう風には思いますね。
何か二人の意見を聴いて、もうちょっとポピュラーになった方が、今は多分、知名度があんまりないと思うので。

古森

私も「アートセラピー」という言葉をこの授業で初めて聞きました。

永井

私もです。
だから、治療を考える時に、すっと選択肢の中に出てくるみたいなくらいまでは広まった方がいいのかなって、個人的には思います。

古森

選択肢としてということですよね。

永井

知らなかったら選択肢に入らないので。

坪内

そうですね。

永井

それはなんかちょっとな、って思いました。
次は、「全ての人がウェルビーイングな世の中は作れるのか」っていう事について。

古森

私は実際理想だと思います。
ですが、残されたウェルビーイングを達成できていない人を想うとそれでいいとは思えないです。
できるだけ人が孤立しないように、コミュニティを自ら作りやすい社会にしていくことが鍵となるのではないかと思います。

坪内

残念ながら難しいと思います。
これに関してはかなり悲観的な考えを持っていて、ひとりの人の幸せは誰かの不幸せによって作られると思ってるんですね。
必ずしもそうとは言えないですけど、結局何かの搾取があって人の幸せってあると思うんですよ。
ゆえに「全ての人が」というのは難しいかなと思います。
ただ、「大人数が」っていうのなら可能かなと。
それでも難しいとは思いますけど。

永井

私もまあ、不可能に近いかなみたいな、不可能って言い切るのはよくないけど、難しいかなって思っています。
ウェルビーイングって、健康かつ幸福みたいな感じじゃないですか。
そもそも、全ての人がってなった時に、例えば、地球上の全てってなっちゃうと、汚染水で生活してる人とか、電気がないとこで生活してる人もいて、その人たちがたとえそこで幸せであったとしても、多分健康の部分がまず問題があるかなって思っています。
国内だけで考えても、やっぱりいろんな状況の人がいて、健康と幸福の両方を維持してるみたいな、常に維持は無理でもそういう瞬間が多ければ、ウェルビーイングって言えるかなと思うんですけど、なかなかそういう人ばかりではないかなって思います。

古森

幸せは人それぞれなので、あんまりつけ込むのも気が引けますよね。
もし自分が幸せで心に余裕があるとき、自分の身の周りに幸せそうでない人がいたら、きっとその時は、自分が幸せにしてあげたいと感じると思います。
そういう身の周りの人に意識を向けることは、希望になるのではないでしょうか。

永井

自分の周りぐらいだったら、頑張れば可能なのかもしれないなっていうふうにも思います。自分の視界に入る全ての人だったら、自分の把握できる全ての人だったら、もしかしたら可能かもしれないって思います。

坪内

その考え方いいですね。
みんながそれをしていけば、最終的に「全ての人が」に近づけるかもしれませんね。

永井

でも、さっきの坪内さんの考え、幸せは何かを搾取するっていうのを聴いて、あ、確かにそうかもしれないなって思いました。
例えばなんかの勝負で、多分お互い勝ちたいと思ってるので。
でも勝つのは1人だから、やっぱり勝つこと全てが幸せではないけど、その場合、負けた時は幸せかって言われたら、その瞬間は多分そうじゃない。

坪内

プロの世界とか特にそうですよね。

永井

それを聴いて、自分にはない考えだったなって思いました。
いいなと思います、その考え。

坪内

ありがとうございます。

永井

じゃあ、続いて幸せとは何かということについてです。

古森

私の幸せは帰る家があって、その家が安全な場所であることです。
そこに自分を必要としている人がいて、自分が必要としている人がそこにいてくれたらもっと幸せです。

坪内

もちろん人によりますけど、自分は人を愛することができて、その人からも愛されることができたら幸せかなと思います。
例えば家族とか、恋人とか友人とか。
自分が好意を抱いている人から明確な好意を向けられたときに、「ああ、幸せだな」と思いますね。

永井

私は、個人個人の状況において主観的に考えて、自分自身が「幸せだな」って思えたとしら、もうそれは幸せということでいいのかなって思っています。
例えば、お金があれば幸せってわけじゃないし。
なんか、家族構成が特徴的だからって、それが不幸に直接繋がるわけでもないと思います。だからその個人個人が「自分は幸せだ」って思ったら、その人がどういう状況であれとも幸せでいいのかな、みたいに思っています。

古森

無理にその人の状況を変える必要はないよね。

永井

その人がそれで幸せならいいみたいな感じです。

古森

ちなみに、永井さん自身の幸せは何ですか。

永井

何だろう…。
大学生になってから、そんなに不幸だって感じてなくて、多分自分の過去の人生、人生というか生きてきた背景、環境とかにもよると思うんですけど。
お金を欲しいとは思うし、あれをしたいこれをしたいとかもあるけど、いま割と満足してる状態なので、何が幸せって言うのかわからないけど。
それ考えると、客観的に見たらどうかわからないけど、自分は割といま幸せな状態かなって思います。

坪内

何しているときが幸せですか。

永井

何しているときが…。
一緒にいたい人と一緒にいて、なんか普通に喋ってたりとか、ご飯食べてたりとか、そういう時間は幸せなのかなって思います。
あとやっぱり、美味しい物食べてる時は幸せかなって思ったりします。

古森

確かに美味しいものを食べられるとか、充分に寝られるとか、そういう積み重ねが幸せになるんだろうなと感じます。
のんびり暮らしたいです。

一同

(笑)

永井

のんびりで幸せならいいと思います。

古森

それが一番幸せだと思います。

永井

じゃあ、次は反対の話っていうか、今までの人生の中でつらかったことはありますか?

古森

自分の欠点が丸見えになった時や、突きつけられた時はとてもつらいと感じます。
私は感情が高ぶっている時に、言いたいことがうまく言えない癖があって、それにずっと悩んでて。
それがもとで失敗したときは、とてもへこみます。
改善する方法がないか、未だ模索中です。

坪内

今までにどういう方法が見つかりましたか。

古森

ひたすら気持ちや状況を文字にすることを実践しています。
あと、たまにYahoo!知恵袋などの相談サービスを使っています。世の中には、見ず知らずの人の相談に丁寧に乗ってくれる人もいるんですよね。自分の悩み事を文字にすることによって、客観的に見つめなおすことができるんです。
自分の悩みって、同じようにネットにあふれている他の人の悩みと同じようなことだと思うと、大したことがないような気分になるんですよね。
それで気持ちを落ち着かせています。

坪内

いいですね。
ちょっと参考にします。

永井

投稿したことないです。
なんか調べものをするときに見るだけだったので。

坪内

投稿する勇気あるのがすごいですね。
自分は、本能と理性が乖離したときですね。
簡単に言うと、「こうしたい」と「こうしなければ」が対立したときです。
あと、自身の中ないし外において自分の思いに反することがあるときですね。
これもざっくりというと、思い通りにいかないときのことです。

永井

私は高校一年の時に、ちょっと人間関係があんまりよくなかった時期があったんです。
その時クラスでの人間関係もあまり良くなかったし、部活での人間関係も別の人だったんですけど、別の問題が両方あって。
だから、クラスにもあんまりいたくないし、部活にもいたくないしみたいな時があって。
その時は結構つらくて、なんかしんどくて、居場所がない感じがすごいしたんです。
居場所があるっていいなって、大事なことだなって思いました。
その時は結局、クラスの方は夏休み挟んで、なんとなく解決したっていう感じで、部活の方もいろいろあったけど、一応解決っていう事にはなりました。
何とかなったと言えば何とかなったっていう感じです。
しばらくたって何ヶ月かしたら、全然平気になって、新しい人間関係をまた作ったっていうか、そこで揉めた人とはそこからあんまり関わってないんですけど。
別の人と仲良くなれたんで、結果的にはよかったかなと思うんですけど、やっぱ人間関係は自分ではどうしようもない部分もあって、つらいなって思いました。

古森

人間関係がうまくいってるかって、幸せにすごくつながってきますよね。

永井

それこそ、さっきの話に少し戻っちゃうんですけど。
いま割と幸せな状態みたいな言ったけど、いま人間関係でそんなに大きな問題がないからってのもあるかもしれないなって、急に気づきました。
特に誰かともめてるとか、苦手な人がすぐ近くにいるとかがないのは、大きいと思います。

永井

じゃあ、次はちょっと話変わるんですけど、美術館を作れるんだったら、どういう美術館にしたいみたいなのはありますか?

古森

私がもし美術館を作れるとしたら、「即席美術館」をやってみたいです。
アーティストを呼んで、そこで制作してもらって、その場に飾るというものです。
制作している過程も鑑賞できるところがポイントです。
今の美術館はホワイトボックス型といいますか、白い壁に絵がひとつひとつ飾ってあるのが主流だと思います。
それもいいですが、動きがあったり、その時にしか見られないという貴重性が、人々の目を引き付けるのではないでしょうか。

坪内

いいですね。
結果だけがアートじゃないですからね。

古森

はい。

坪内

自分は、歴史を物語る作品を集めて、それらを時系列に並べる。
ないしは、作品の背景がつながる作品同士を近くにおいて、人の歩みとアートの歩みを同時に理解でき、アートをより身近に感じられる美術館を作りたいなと思いますね。

永井

私は、美術に興味のない人が訪れたくなるような美術館を作りたいなと思っています。
美術に興味がある人は多分、既存の美術館に行ってるんで、そういうものを作っても、結局同じような人しか行かないと思うんですよ。
だから、美術に興味がない人が訪れたくなるようなところって、あんまりないかなと思ったんです。
絵に興味なかったら美術館に行こうって思わないじゃないですか。
だから、そういう人が訪れたくなるような美術館がいいかなって思っていて、その点では今の古森さんの話がいいかなって思いました。

坪内

できそうだから、やってみてほしいですね。

古森

そういう画家もいると思うんですよね。

永井

バンクシーみたいな感じですか。

古森

バンクシーの公式版みたいな(笑)
そういうイメージです。

永井

実際に見たら美術に興味湧くかもしれないし、ちょっとイベントっぽい感じがするかなって思うんです。
誰かが来てやるって聞いたら、そんなに興味がない人でもちょっと面白そうだな、行ってみようかとなりそうだなって、今の話を聴いて思いました。

坪内

勝手な希望をいま抱いたんですけど、来年のギャラリーコンパでそのような形の作品の鑑賞をしてほしいなと思いました。
作ってるところから鑑賞するという感じで。

永井

ちょっと変わった技法とか使っている人だったらなおさら、あそこに置いてある道具は何に使うんだろうとか、そういう話をしたら結構会話が弾むっていうか、いいんじゃないかなって思いました。

永井

最後に、この授業で印象に残ったことはありますか?

古森

私はひやまさんのインタビュー授業が一番印象に残っています。
今の社会は男性が作ってきたものだから、女性の体に必ずしも合っているわけではないので自分たちで作っていく必要があるという言葉に感銘を受けました。
自分の将来について悩んでたこともあったけど、働き方は人それぞれであるべきという考え方を社会人になっても意識したいです。

坪内

何かいま具体的に考えていることってあるんですか?

古森

全然ないです。

永井

とりあえずは就職っていう感じですか。

古森

そうなるんですかね。

永井

選択肢として考えているみたいな感じですか。

古森

そんな感じです。
具体的には考えはまとまってなくて。
ですが、就職だけではないという考えを新しく知りました。
ひやまさんのおかげで世界が広がりました。

坪内

僕は二つあって、一つ目は、秦恭子※1先生の授業。
自分自身も病んでいた時期があって、とても共感できたし、対処方法などは参考になりました。
二つ目はギャラリーコンパ
まず、出てくる感想は「難しかった」。
ファシリテーターをこなされる方は、こんなにすごいことをしているのかと驚きました。
内容について触れると、複数人のグループということもあって多様な視点があり、発見ばかりでとても面白かったです。
また、視覚障がい者の方の「見えないけど、“見えてる”」というのには、改めてすごいと思いました。

※1国語教育研究者。鳥取大学デザインプロジェクト2022年度の授業内でレクチャーを行った。

永井

私もギャラリーコンパが印象に残っていて。
当日、自分はファシリテーターじゃなかったんですけど、いま二人が大変だったみたいに言ってたけど、正直ちょっといいなと思ってて、やりたいなと思っていました。
でも、教室で一回やったじゃないですか。
その時に思ったのは、絵を観ながら会話したりとか、絵について説明するみたいなのは全然経験がなかったので、すごい楽しかったし、すごく新鮮に感じました。
あとは様々な障がいの持つ人が当日いらっしゃって、割と視覚にまつわる障がいの方が多かったのかなって思うんですけど、そういう方との経験が全然なかったので、初めて関われていい経験になったかなっていうふうに思いました。

てとら組

鳥取大学デザインプロジェクト2022年度受講生

てとら組メンバー:永井花、古森南帆、坪内優志